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インジェクション/イグニッションシステムの概要
エレクトロニックフューエルインジェクション/イグニッションシステムを導入する事で、オットーサイクルエンジンの性能を最大限に引き出し、高出力と同時に燃費の向上、さらには排気ガス中の有害物質の総量を削減されました。 このシステムにより空燃比の調整と点火進角値の最適な制御が可能となりました。
 
このシステムは3つの回路から構成されています:
燃料回路
インテーク回路
電子回路(コントロールユニット、センサー、アクチュエーター)
空気/燃料比および点火進角の影響
空燃比と進角値の適正化はエンジンを最適に作動させるための基本的要素です。
空燃比はエンジンが吸入する燃料と空気の重量比により決定されます。 理想的な比率では完全燃焼が行なわれます。 吸入空気量が多い場合または少ない場合、それぞれリーンまたはリッチとなり、エンジン出力、燃料消費、排気ガスのエミッション値に影響を与えます。
点火進角を電子制御することにより、エンジン性能、最大出力、燃料消費、エキゾーストシステム中の汚染物質の濃度を最適化することができます。
フューエルシステムに内蔵されている点火進角の電子制御は、あらゆる使用条件下においてエンジンの機能を最適化させることができます(低温時の発進、暖機時、スピードアップ/ダウン時、部分負荷、最大積載時、アイドリング時)。
インジェクション/イグニッションシステム Siemens M3C
Siemens M3Cインジェクション/イグニッションシステムには、Alfa/N制御方式が採用されています。この方式では吸入空気量を測定するためにエンジン回転数とスロットル位置を主要パラメーターとして使用します。 この空気量に従って、必要な濃度になるよう燃料の量を調整します。 システムに搭載されているその他のセンサー(エンジンセンサー、インテークエアプレッシャー、気温センサー、エンジン温度センサー、CO濃度点検用ラムダセンサー)作動条件の関数として、基本エンジン制御方法を調整します。 また、エンジン回転数およびスロットル開度によって、あらゆる使用条件において最適な進角値を算出することも可能です。 各シリンダーが1行程ごとに吸入する空気量はインテークマニホールド内の空気密度、シリンダー容積、および容積効率によって決定されます。
容積効率はエンジンの全作動領域(回転数および負荷)を実験により測定し、 このようにして得られたデータをコントロールユニットSiemens M3CFlash Epromに記録し、インジェクションをマネージメントします。 Flash EpromはCANラインを介してプログラムされます。インジェクター制御は"連続方式"で同時に制御されます。 燃料噴射はシリンダーごとの膨張行程からから吸入行程の初期まで行われ、 噴射終了時期(インジェクター閉時)はコントロールユニットのFlash Eprom に記憶されています。 イグニッションシステムは静誘導放電方式で、ドエル値を点検する事によりコイルへの充電を一定に保ちます。 コイルへの供給のためのパワーモジュールはコントロールユニットのハードウェアに内蔵されており、進角はFlash Epromに記録されています。 コイルおよびパワーモジュールはコントロールユニットで点火進角が算出され、制御されています。
参考
インジェクション/イグニッションシステムの配線および構成部品の点検には、DDS 診断テスターを利用し、"ガイド診断"(セクション6-13)の記載に従います。
センサー回路図の記号説明
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燃料回路
タンク内にある燃料は、タンク下部にあるフランジ内に配置されているポンプでインジェクターに向けてデリバリーホース(OUT)に押し出されます。 フランジには燃圧をコントロールするプレッシャーレギュレーターが内蔵されており、エンジンからの燃圧を高く保ちます。 インテークマニホールド内に噴射されない燃料は、リターンホース (IN) を通してフランジ、そしてフューエルタンクに戻ります。
インテーク回路
インテーク回路は2つのインテークマニホールド(A)、スロットルボディ(B)およびスロットルボディ上にあるインテークボックス(C)(エアボックス)で構成されています。
この車両はスターティング時にスロットルを通過させるエアを決定するステッパーモーター(14)を搭載しています(この章の"作動概要"参照)。
エンジンコントロールユニット(イグニッション/インジェクション)は気圧、気温、エンジン負荷に基づいた燃料供給に必要なセンサーを装備しています。 バーチカルシリンダーのインテークマニホールドに取り付けられた気温センサー (6) およびインテークダクトに接続さらたエンジンユニットの"V" の間に取り付けられた気圧センサー (5) によって気圧が測定されます。この情報がセンサーからECUに送られるので、必要に応じて燃料噴射量を調整できます。これは、高度が変化する行路 (海面レベルで始まり高地で終わる行路など) に不可欠です。 それ以外にもコントロールユニットは空気の密度により混合度を変える機能もあります。 (同じ容量の空気でも、気温が高いと酸素量が少なく、気温が低いと酸素量が多くなります。
混合比を一定に保つため、気温が高い時には減らし、低い時には増やします。)
ホリゾンタルおよびバーチカルシリンダーのエキゾーストホースには2つのラムダセンサー(4)(15)が固定されており、空燃比のコントロールシステムを操作します。
リアシリンダーのスロットルシャフト上には、エンジンから吸入された空気量をシグナルとしてコントロールユニットに送付するスロットルポジションセンサー(12)が配置されています。
作動概要
通常の作動
エンジンが通常作動温度であれば、コントロールユニットは記憶されている値と比較しながら、エンジン回転数とスロットル開度に従い、噴射タイミング、進角値を計算します。 このようにして決められた燃料の量は、一回の供給で継続的に各シリンダーに送られます。
始動時
イグニッションスイッチをON位置に回すと、コントロールユニットはフューエルポンプに数秒間電源を供給し、フューエルシステムを始動させます。 スロットル開度とエンジン温度が点検されます。 。 エンジンが始動するとコントロールユニットはエンジン回転数とタイミングの信号を受け取り、インジェクションとイグニッションを制御できるようになります。 始動しやすくするため、エンジン温度に基づき混合比が濃くなります。 始動中、エンジンが始動するまで点火進角は 0°に維持されます。 エンジン始動後、コントロールユニットは気温とエンジン温度と記録されているデータに基づき進角を制御し始めます。
加速/減速時
加速時は、エンジンの応答性を最適化するため、コントロールユニットは燃料供給量を増加させます。 スロットルを回す速度により、加速していると確認されます。 有害物質の排出と燃費を抑えるため、スロットルを閉める速度により急な減速時と確認された場合には燃料供給量は減少されます。